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鳥取家庭裁判所米子支部 昭和58年(少)137号 決定 1983年9月02日

少年 T・R(昭四三・五・二七生)

主文

少年を初等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は、

一  Aと共謀の上、昭和五七年一二月一六日午後四時三〇分頃、鳥取県米子市○○×××番地の××B方において、Bほか三名所有にかかる現金一一、一五〇円およびゲーム・ウオツチ二個ほか五点(時価合計九、九〇〇円相当)を窃取した

二  C、D、Eと共謀のうえ、金品を喝取しようと企て、昭和五八年一月二日午後一時頃、鳥取県米子市○町×××番地、同市立○○小学校グランドに○○中学校F(当時一三歳)、G(当時一三歳)を連れ込み、同所において、F、Gをとりかこみ、C、T・Rが「どこの中学生だ」「金を出せやー」等申し向け、右要求に応じないときは、どのような危害を加えるかも知れない態度を示して脅迫し、同人を畏怖させ、よつて即時同所において、右Fから現金一五、〇〇〇円、Gから現金一一、〇〇〇円の各交付を受け、これを喝取した

三  昭和五八年一月二日午後三時頃、鳥取県米子市○○町地内H模型店前にいた、○△中学校J(当時一三歳)、K(当時一二歳)の二人から金品を喝取しようと企て、同行のGに命じ、同人に声をかけさせ、同人を米子市○○町××番地L美容院横駐車場内に連れ込んだうえ「ほんとにおめえ一〇〇円しか持つてねえか、財布を出してみろ」と申し向けるとともに、平手で左頬を一回殴打するなどして、金品を要求し、もし、その要求に応じなければ、いかなる危害を加えるかも知れない態度を示して脅迫し、同人を畏怖させ、よつて即時同所において右Jから現金五、〇〇〇円の交付を受け、これを喝取した

四  C、D、M、N、Oと共謀のうえ、金品を喝取しようと企て、

1  昭和五八年一月五日午後零時一〇分頃、鳥取県米子市○○○町××番地、鳥取県○○勤労者消費生活協同組合屋上男子便所に△△中学校P(当時一四歳)を連れ込み、同所において、T・R、D、Nが「このズボンはなんだ」「財布を出してみー」等申し向けるとともに、右平手で左頬を一回殴打するなど、右要求に応じないときは、どのような危害を加えるかも知れない態度を示して脅迫し、同人を畏怖させ、よつて即時同所で同人から現金一〇、〇〇〇円の交付を受けて、これを喝取した

2  同日午後零時三五分頃、同市○○町×丁目××番地、○○○堂出入口前において、○○前から連れ出した△○中学校Q(当時一三歳)、R(当時一三歳)、S(当時一二歳)をとり囲み、同人らに対し、「金を出せや、俺は少林寺けん法をやつている」「金を出せ、出さんとなぐるぞ」等申し向けるとともに殴る姿勢をとるなどし、右要求に応じないときは、どのような危害を加えるかも知れない態度を示して脅迫し、同人らを畏怖させ、よつて即時同所で、右Qから現金六、〇〇〇円、Rから現金二、五〇〇円、Sから現金一五、〇〇〇円(合計金額二三、五〇〇円)の各交付を受けて、これを喝取した

五  Tと共謀のうえ、

1  昭和五八年七月二二日午前一時三〇分頃、鳥取県米子市○○○字○○○×××番地の×、アパート○○裏駐車場において、被疑者不詳が窃取してきて置き去りにしたU(当時三九歳)所有にかかる軽四輪貨物自動車鳥取××こ××××号一台(時価三〇万円位相当)を発見し、これを拾取しながら警察官に届出をするなど正規の手続をとらず自己の足がわりとして使用し、もつて横領した

2  同年同月同日午前三時頃、同市○○町×××番地V石油店裏空地においてV(当時六四歳)所有にかかる普通乗用自動車鳥××ら××××号一台(時価三〇万円位相当)を窃取した

六  公安委員会の運転免許を受けないで

1  昭和五八年七月二二日午前一時三〇分頃から同日午前二時三〇分頃までの間、鳥取県米子市○○○字○○○×××番地の×、○○裏駐車場から同市○町経由同市○○×××番地W方北方一〇〇メートル位の農道の間を、軽四輪貨物自動車(鳥取××こ××××号)を運転した

2  同年同月同日午前三時頃から同日午前四時四〇分頃までの間、同市○○町××××番地V石油店裏空地から同市○○経由西伯郡○○村大字○○×××番地X医院駐車場の間を善通乗用自動車(鳥××ら××××号)を運転した

ものである。

(法令の適用)

一の事実につき 刑法二三五条、六〇条

二、四の1、2の事実につき 刑法六〇条、二四九条一項

三の事実につき 刑法二四九条一項

五の1の事実につき 刑法六〇条、二五四条

五の2の事実につき 刑法六〇条、二三五条

六の1、2の事実につき 道路交通法一一八条一項一号、六四条

(処遇の理由)

一  少年は、現在、中学三年生として在学中であるが、中学二年当時前件窃盗事件(当庁昭和五七年(少)第三九六号)を起こし不処分となつていたもので、さらに本件判示一(窃盗)、同二、三、四の1、2(恐喝)の非行をなし、昭和五八年四月四日試験観察に付されていた。

当裁判所は、少年がその後家出を繰り返す等により同年六月二三日観護措置(第一回)をとり、同年七月八日訓戒のうえ試験観察続行の審判をなし、在宅処遇に任せた。しかし、少年は本件判示五の1、2(窃盗、占有離脱物横領)、同六の1、2(無免許運転)をなす等問題行動がさらに激しくなつたため、当裁判所は同月二二日観護措置(第二回)をとり、同月三〇日鳥取県立喜多原学園園長○○に身柄付補導委託をなした。しかるに、少年は一か月内に同学園から無断外出事件二回をなし、その際自動車窃盗、無免許運転、ボンド吸入(右は現在未送致)を行なう等問題行動はおさまらなかつた。

二  松江少年鑑別所作成の鑑別結果通知書(二通)のとおり、少年の資質に問題があり、これを矯正するのに前記一の経緯に照らし在宅処遇に任すことはもはやできないというべきである。

そこで、この際少年を初等少年院に収容し、少年の情緒的、社会的未成熟さを改善させ、社会的規範を身に付けさせることが少年の健全な育成を期するために必要である。

三  但し、少年は義務教育である中学に在学中であり、その非行性も著しく高いとまでいえないこと、本件各非行は複雑な家庭に育つた少年の心理的問題にも帰因するもので少年のみを責めることはできないこと、少年の家庭に対する感情や考えを整理することにより非行性が低下する可能性が高いことを考慮すると、短期処遇で矯正の効果をあげることが望ましい。

四  よつて、少年を初等少年院に送致することとし、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 駒谷孝雄)

処遇勧告書<省略>

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